陳腐な言葉かもしれない。
しかし、彼を一言で言い表すとしたら、この言葉しか思い浮かばない。
スーパーマン。
大谷翔平のことだ。
異論をはさむアメリカ人はおそらくいないだろう。
そういえば、彼を「宇宙人」と評した実況もあった。
アメージングな男。それが大谷翔平である。
そんな彼から我々は何を学べるのか?
僕は大谷のこれまでの発言を調べてみた。
大谷には寡黙な男というイメージがある。
だが、内面は決してそうではなかった。
温和で優しそうに見える顔つきに騙されそうになるが、彼は驚くほど負けず嫌いな男だった。
目次
「誰もやったことがないようなことをやりたい」
大谷は1994年岩手県水沢市で生まれた。
父親は社会人野球の選手、母親はバドミントン選手だった。
野球を始めたのは小学校3年の時。
当時から球は速く、5年生のときに110kmを記録している。
大谷は同郷の菊池雄星に憧れ、同じ花巻東高校へ進学。
この時に掲げた夢はとてつもなく大きなものだった。
「世界一の投手になる」
彼はこう言っている。
「誰もやったことがないようなことをやりたい。
野茂英雄さんもそうですし、成功すれば高校からメジャーへという道も拓けると思う」
160km/hの目標を掲げた時には「無理じゃないか」という声もあった。
しかし、そう言われると、逆に燃えたという。
「絶対やってやるという気持ちになる。刺激というか、やる気になる」
そのためにはセルフイメージもきちんとできる。
「頭で最初に考えて、そして後からモノができる。
160キロ投げている姿がある。そこに後からできる現実がある」
「僕は最初から野球が上手かったわけではない」
意外だったが、大谷は野球少年だった頃をこうふりかえっている。
「僕は最初から野球が上手かったわけではない。
僕より野球の上手い選手もたくさん見てきた。
そこでダメだと思わずに、上手くなって勝っていくこと、
そこが自分の才能だと思う」
あきらめずに努力する。
それが自分の才能だという大谷。
スーパーマンの言葉でもなければ、宇宙人の言葉でもない。
平々凡々な努力家の言葉である。
さらに、大谷はこうも言っている。
「僕はマイナス思考なんですよ」
「僕はマイナス思考なんですよ。
良かった時より、悪かった試合の記憶のほうが残る。
だから弱点が見えたら、しっかり直して塗り潰したい気持ちが強いんです」
大谷はサラッと言っているが、これはスゴイ言葉だ。
彼の「負けず嫌い」は弱点を塗りつぶすことなのである。
さらに、スゴいのは、
「一日一日重ねるたびに、足りないところが見えてきます。
どこまで野球が上手くなれるか、それを楽しみに頑張りたいと思います」
「だいたい6時間から7時間はトレーニングをしている」
「自分の中で課題を消化するのが野球のおもしろさなのかなと思います」
「今日、これが良かったあれが悪かったと書きながら、頭の中を整理しています」
それが大谷のマイナス思考なのだ。
実は、彼の本当の才能は「努力が苦にならない」ことなのではないか。
そして、努力に対する考え方もストイックである。
「思い通りに投げられなかったボールで抑えたことをオッケーにしちゃったら、成長するチャンスを失うことになるし、もったいないじゃないですか」
「周りからは失敗に見えることでも、僕からしたら前へ進むための段階という場合があります。
決して、後ろに下がっているわけではない」
そして、大谷の才能を開花させた理由と考えられるのが、脇目を振らない性格だ。
「何したいとか特に無いです」
大谷はプライベートではほとんど外出しない。
日本ハム時代、大谷は栗山監督にこう言われた。
「二刀流をやろうとしていることを考えたら、我慢しなくてはいけないことが一杯ある」
だが、彼はこう答えている。
「制限されてもされなくても変わらないと思う。
何したいとか特に無いですし、いいのかなと思います」
「特に欲しいものもないので(お金は)たまっていく一方ですね」
この発言には思わず笑った。
とにかく野球ができればいい。
それも苦行僧ではなく、楽しんでいる。
まるでテレビゲームに夢中な少年のように。
「野球以外になにをすることがあるのかなと思います。
食事も球場に用意されているので、それを食べることが多いです。
たまに外で食べることもありますが。
野球に集中できる環境があるというのはいいことじゃないかと思っています」
脇目も振らずに野球に集中しているように見える大谷だが・・・
「楽しみがないって、そんなことはありません(笑)。
僕だって、普通にマンガ読んでいる時とか、楽しいなって思ってますよ」
漫画では、井上雄彦の『リアル』や『スラムダンク』が好きだという。
ちなみに、読書も好きで、歴史物が好みらしい。
「特に幕末が好きですね。
日本が近代的に変わっていくための新しい取り組みが多くて、歴史的に見ても大きく変わる時代。
『革命』や『維新』というものに惹かれるんです」
二刀流という野球界の革命児らしい発言である。
「ピッチャーはゲームを作れる。バッターはゲームを決められる」
二刀流について、彼はこう言っている。
「ピッチャーはゲームを作れる。バッターはゲームを決められる」
野球はチームプレーだが、大谷は1人でやって勝とうとしている。
そんな風にも思わせる言葉である。
大谷の二刀流については賛否両論が沸き起こったが、彼の考え方はとてもシンプルである。
「駄目だったら(二刀流が)終わるっていう。
ただそれだけの簡単なことだったので」
そして、成績が振るわなくても・・・
「いい時はいい、悪い時は悪い。そういう割り切りも大事かなと」
決して周りには揺るがされない。
これも大谷の成功の秘密なのだろう。
まとめ
大谷翔平。
彼は今や間違いなくスーパーマンである。
だが、外見からはそれを感じさせる雰囲気はない。
そして、派手さもない。
優しそうで寡黙な青年。
それが大谷翔平のイメージだ。
にもかかわらず、誰にもできないことをやってのける。
これまで誰も見たことがないヒーロー。
それが大谷翔平である。